事故を起こしたとしても自動車保険の等級が変わらない場合ってあるの?

自動車保険の「等級」という言葉、自動車保険に加入されている方や自動車運転をされている方なら一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
そして、このような方の多くは「事故を起こせば自動車保険料は高くなる」というイメージを持たれている方も少なくないでしょう。
実は結論から申し上げると、自動車事故を起こしたからといって自動車保険料が高くなるということはないのです。
この理由は最初に記述した「等級」が1つの要因として挙げられます。等級とは“契約者の事故歴に応じた保険料の割引・割増を適用する制度”ソニー損保ホームページより引用、のことを言います。
ここで勘の鋭い方なら「事故を起こしたから事故歴があるのでは」と思ってしまいがちですが、これも含めて今回は自動車保険の等級が変わらない場合について専門家であるファイナンシャルプランナーがいくつかの例をご紹介していきます。
そもそも自動車保険を使用しない
自動車保険の等級が変わらない場合の1つ目として「加入している自動車保険を使用しない」ことが挙げられます。
冒頭の等級説明では、契約者の事故歴に応じた保険料の割引・割増を適用する制度とご紹介しましたが、ここでポイントになるのは「事故歴」です。
一般に交通事故を起こしてしまった場合、警察からさまざまな事情聴取を受け、結果として「事故歴」が付されます。
この時、事故相手を補償するためや自分の自動車を修理するためなどで保険会社へ連絡し補償を受けた場合には、保険会社も「事故歴」があるとし翌年度からの等級を下げて対応します。
しかしながら、自動車事故の程度が軽く必ずしも自動車保険を使用する必要がない場合も十分考えられます。このような場合、警察における「事故歴」は付されるものの、保険会社における「事故歴」は付されないことになり、等級が下がることはありません。
つまり、ここでいう「事故歴」とは「自動車保険を使用した」ということであり、一般的な事故歴と意味が異なります。
まとめ表
事故歴 | 等級の変化 | |
警察 | 交通事故の場合、付す | どちらの事故も自動車保険を使用した場合に下がる |
損害保険会社 | 保険事故の場合、付す |
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自動車損害賠償責任保険の補償範囲内であれば等級が変わらない
自動車保険の等級が変わらない場合の2つ目として「自動車損害賠償責任保険(以下、自賠責保険)の補償範囲内であれば等級が変わらない」ことが挙げられます。
自動車を運転するためには自動車運転免許を所有していることの他に自賠責保険に加入していなければなりません。まずは本テーマに関係がある自賠責保険の特徴を以下にまとめてご紹介していきます。
自賠責保険の特徴
自動車保険の特徴まとめ
- 1.自賠責保険は「強制加入」
- 2.事故相手を死亡させた場合、一事故一人あたり最大で3,000万円まで補償
- 3.事故相手に後遺障害を負わせた場合、障害に応じ75万円から4,000万円の範囲内で補償
- 4.事故相手に傷害を負わせた場合、一事故一人あたり最大で120万円まで補償
- 5.自賠責保険の補償対象は「事故相手に対する身体のみ」
自動車の保険は強制加入である「自賠責保険」と任意加入である「自動車保険」の2種類に大きく分けることができます。
自賠責保険の特徴は上記リストのとおりですが、こちらの範囲で事故相手に対する補償が済んだ場合、自動車保険を使用する必要がありませんので、結果として保険事故とみなされず等級が下がることはありません。
しかしながら、実際問題として自賠責保険の補償は上記リストの5のとおり「事故相手に対する身体のみ」補償するため、補償の範囲としては不十分です。
具体的には「相手の物(自動車など)」「自分の身体への補償」「自分の自動車への補償」については自賠責保険から補償されることはありませんので、任意加入である自動車保険や自己資産から補わなければなりません。
さらに付け加えますと、自動車事故における死亡や後遺障害を負わせた場合の損害賠償は億単位であることも珍しくありません。
交通事故における死亡及び後遺症損害賠償金額
高額賠償順位 | 損害賠償金額 | 被害者職業等 | 事故後の状況 | 被害者の 過失割合 |
---|---|---|---|---|
1位 | 5億843万円 | 眼科開業医 | 死亡 | 60% |
2位 | 3億7,829万円 | 大学3年生 | 後遺障害 1級1号 |
20% |
3位 | 3億6,756万円 | 会社員 | 後遺障害 1級3号 |
5% |
4位 | 3億5,936万円 | 会社員 | 後遺障害 1級1号 |
30% |
5位 | 3億5,250万円 | 整形外科・内科開業医 | 死亡 | 40% |
出典 同サイト 「自動車保険のプロが選択する安心できる補償内容4選」より引用
もし、読者の皆様が自動車事故を起こしてしまい上記のような損害賠償命令を裁判所から受けたとしたらどうでしょう。実際に自動車事故を起こした人に対して支払命令が出ているだけに自分は大丈夫なんていう保証は決してありえません。
自賠責保険の特徴でご紹介した「事故相手を死亡させた場合、一事故一人あたり最大で3,000万円まで補償」「事故相手に後遺障害を負わせた場合、障害に応じ75万円から4,000万円の範囲内で補償」がいかに不十分な補償内容かご理解できたのではないでしょうか。
まとめ
今回は自動車保険の等級が変わらない場合として
等級が変わらないケース
- そもそも自動車保険を使用しない
- 自動車損害賠償責任保険の補償範囲内であれば等級が変わらない
と2つの場合をご紹介致しました。安全運転を常に心がけることはもちろんですが、状況に応じて自動車保険を使用するかしないかの判断が以後の自動車保険料や等級に対して影響を与える要因になります。
少し堅苦しい話になりますが、自動車損害賠償責任ができた背景には次のような考えがあります。
"自動車事故のために人が死亡したり負傷したりした場合に損害を与えた相手をそのままに放っておくことは世の中の秩序を乱してしまいます。そのため損害を与えた者は相手に対して賠償し被害者の保護についての公平性を図るため"に制定されました。
現実問題として、損害賠償命令が仮に1,000万円単位で出たとしても自賠責保険の最大補償金額は一人あたり最高で3,000万円まででありますから、自賠責保険だけでは被害者の保護は不十分であり公平性を図ることはできない可能性があります。
したがって、しっかりとした補償内容の自動車保険に加入していなければならないと今回の内容で改めて気付けたのではないでしょうか。自動車保険に加入することは相手の人生だけでなく自分や家族の人生も補償するお守りであることを決して忘れてはならないでしょう。