プロが教える自賠責保険(自賠償保険)の請求方法・手続きの詳細
執筆者 | |
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ファイナンシャルプランナー:須藤 公保 |
自動車やバイクに乗る人なら誰もが知る自賠責保険ですが、保険金請求の方法をご存じでしょうか?
保険金請求は、「加害者請求」と「被害者請求」の2つの方法があります。
多くの場合、任意保険の保険会社が加害者に代わり賠償金を支払い、必要書類を揃えて自賠責保険に対し加害者請求の一括請求を行っているので、あまり知られないのです。
しかし加害者が任意保険に入っていない場合や、被害者が後遺障害の認定などを含めて被害者請求を行いたい場合は、それぞれが請求手続きを自分で行う必要があります。
自賠責保険の加害者請求、被害者請求について、それぞれの流れとしくみを解説してまいります。
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1.加害者請求と被害者請求の違いと請求の流れ
自賠責保険は、現在も対人賠償保険の要になっており、2013年の年間請求件数は135万件に達し、被害者1名に対し平均で67.9万円支払われています。
毎年多くの請求がなされ、人身事故の賠償保険金が支払われています。自賠責保険の保険金請求には、事故の加害者と被害者のどちらからも請求が可能ですが、請求のタイミングが全く異なります。
加害者請求と被害者請求の違い
自賠責保険の請求は、加害者請求を15条請求、被害者請求を16条請求と呼び区別しています。請求者によって、保険金の受取内容に違いがあり、また、保険金請求期限にも消滅時効の内容にも違いが設けられています。
自賠責保険の保険金請求権の消滅時効
傷害 | 死亡 | 後遺障害 | |
---|---|---|---|
加害者請求 | 賠償金支払い日から3年以内 | ← | ← |
被害者請求 | 事故の日から3年以内 | 死亡日から3年以内 | 症状固定した日から3年以内 |
事情により請求手続きに遅れが生じる場合は、時効中断の手続きを取ることも可能です。(参考:プロが教える自賠責保険の時効中断手続き)詳しくは、自賠責保険の損害保険会社に相談しましょう。
保険金請求の多くが「加害者請求」になっているのは、先ず「加害者が被害者に賠償金を支払う」ことが一般的に優先されており、多くの事故では任意保険会社が肩代わりして被害者に支払っているからです。
加害者請求では、賠償金の支払い事実がなければ保険金の支払いは受け付けてもらえません。 対して被害者請求では、損害が確定すればその都度、被害者から直接保険金の請求が可能になっています。
また、事故による受傷でさしあたりの治療費の支払いなど、必要なお金をまかなえるように、一定の範囲で仮渡金の給付制度が設けられています。
以下に自賠責保険の契約から、事故発生、保険金請求、事故・損害の調査、保険金支払いの流れを図で示しています。
自賠責保険の契約から支払いまでの流れ
1.自賠責保険の契約
2.人身事故による損害発生!
3.保険金請求の手続き
4.事故と損害内容の調査
5.(審査会)
6.保険金支払い内容の決定
7.保険金支払い
※自動車総合安全情報サイト「保険金支払いまでの流れ」を参考
保険金請求者の違いは「2.人身事故による損害発生!」と「3.保険金請求手続き」の間において、治療費など損害費用を支払った人の違いということです。
加害者請求は被害者に賠償金を支払ってから、被害者請求は医療機関への支払いや被害の確定時点で請求できると覚えておきましょう。
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2.加害者請求の流れとポイント
2013年に135万件にも達した膨大な請求ですが、意外にも私達が直接目にしないのは、加害者請求の多くを任意保険会社の事故担当者が手続きしているからです。
しかし、任意保険に入っていないようなケースでは、加害者本人が被害者への賠償金を支払ってから、保険金請求書類を揃えて自賠責保険会社に保険金請求を行います。
加害者請求の流れ
最初に自賠責保険会社の最寄りの窓口に出向いて、保険金請求書類一式をもらってきましょう。中には、保険金請求のために必要な書類と交通事故証明など揃える必要のある書類など、詳細に説明が記載されています。
その時点での不明点は、保険会社窓口でも教えてもらえますが、相手との示談交渉や書類の取り付けは、すべて加害者本人と被害者に依頼して署名してもらい作成することになります。
保険金請求書類とその他の必要書類については、「自賠責保険金を被害者自身が直接請求する「被害者請求」」の別表を参照して下さい。
加害者請求のポイントと現実
加害者請求を行う場合、被害者への賠償金支払いを先にする必要があります。つまり支払った後でなければ保険金を受け取ることができません。傷害事故で最大120万円まで保険金請求できますが、先に支払ってから請求するということは、それだけの資力が必要ということになります。
自賠責保険は、被害者請求にて直接請求が可能ですが、交通事故被害者を救済するための最終手段であり、本来は加害者が賠償金を先に支払うのが道理とされています。
それでも実際に費用の捻出が難しい場合、被害者に依頼して「被害者請求」の手続きを進めてもらうように丁重にお願いする必要があるでしょう。被害者にとっては、踏んだり蹴ったりの話しですから慎重な対応が要求されます。
3.被害者請求の流れとポイント
交通事故被害者には、自ら被害者請求を行う人もいますが全体数から見れば圧倒的に少ないのが現実です。
請求の流れと注意点
任意保険会社の一括払い手続きにより、加害者請求が一般的になっている自賠責保険の請求ですが、被害の状況次第では、早い段階ですべてを結論付けて相手方の言うままに示談してしまうのは、時期早々というものです。
人身事故の被害は、身体に影響を及ぼすものであり、すべての人が同じ期間、同じ条件で完治するとは限りません。その多くでは、後に後遺障害を残すなど一定期間の診療の後、症状の固定を確認して後遺障害認定を受ける必要もあります。
幸い被害者請求は、一度にまとめて請求しないで当面の治療費用として仮渡金の給付を受けて、後に本請求手続き、後遺障害認定と請求手続きを個別に行うことができます。
請求のポイント
被害者請求の流れとしては、次のポイントをおさえて治療回復に取り組み、段階的に請求を行うと良いでしょう。
被害者請求のポイント
- 1.初期段階では、症状に応じた仮渡金の給付を受けて治療に専念する
- 2.初期診断の完治までの期間と予想される診療費用を元に健康保険の利用を検討する
- 3.治療の中期段階で、完治と後遺障害について医療機関と相談し対応策を検討する
ムチ打ちなどの症状で頚椎などに支障をきたしている状況では、最初の段階で被害を判断することは難しいでしょう。早い段階の示談は、後遺障害の等級認定も含めて結論付けることは危険です。専門医や損害賠償請求の法律専門家と相談して、対応策を練る必要があるでしょう。
後遺障害と逸失利益については、「自賠責保険と任意保険の決定的な違い」の(5-3.後遺障害による損害の場合)にて解説していますのであわせてご覧下さい。
4. プロが教える自賠責保険請求のまとめ
自賠責保険金の請求についてまとめます。
自賠責保険金請求のポイント
- 1.被害者・加害者のどちらからでも請求が可能
- 2.加害者請求は、賠償金を被害者に支払った後に請求ができる
- 3.被害者請求には、さしあたりの治療費として仮渡金制度が有る
- 4.保険金請求には消滅時効の期間があり、加害者・被害者の立場により異なる
- 5.任意保険会社の一括払い手続きは便利だが、示談は慎重に行う
以上、5つのポイントをおさえて保険金請求手続きに取り組んで下さい。