自動車保険の解約手続きと等級を最長10年引き継げる中断について
執筆者 | |
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ファイナンシャルプランナー:大泉 稔 |
様々な理由で、車を手放すことを考える方もいるでしょう。車を手放すとき、自動車保険は解約できるのでしょうか?自動車保険は1年更新なので「解約を考えるのも面倒なので、満期まで放っておく」と仰る方も、何名かいました。
解約は手続きが必要ですので、面倒というお気持ちも分かりますが、ひと手間を掛けることで、解約の手続きだけでなく、積み上げてきた等級の保存も可能です。
満期を待たずして自動車保険の解約はできますか?
満期を待たずして、自動車保険を解約することは、もちろん可能です。
代理店系でも、ダイレクト系でも、証券に書かれている(事故受付ではない)コールセンターに「自動車保険を解約したい旨」を申し出れば、変更申出書などの書類を送ってくれます。
送られた書類にサインをして返送すれば解約手続きは終わりなので、至って簡単なものです。
ところが、コールセンターに電話をして「解約を申し出れば、解約手続きは終わり」と思い込んでいらっしゃる方が、結構、多いようです。
住所変更など、他の手続きはともかく、解約手続きについては「電話だけで済む」ということは無いと考えられます。
自動車保険を解約すると解約返戻金はもらえますか?
イマドキの自動車保険は掛け捨てタイプの商品がほとんどですから、解約して戻ってくるのは解約返戻金ではなく「未経過分の保険料が戻ってくる」と言うべきでしょう。
年払い契約の場合、短期料率が適用されることになります。短期料率が適用されると、未経過分の保険料の戻り額は、以下の表のように「月割り」の金額よりも少ない金額が戻ることになります。
「損した気がする」と言う方もいらっしゃるかも知れませんが、元々、年払い契約の保険料は、月払い契約のそれに比べ、割安になっていますから。
表:年払い契約の自動車保険の未経過分の保険料の戻り額(年払い保険料が60,000円の場合)
解約時期 | 7日 | 15日 | 1か月 | 2か月 | 3カ月 | 4か月 | 5カ月 |
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短期料率による戻り額 | 54,000 | 51,000 | 45,000 | 39,000 | 33,000 | 27,000 | 21,000 |
月割りの額 | 55,000 | 50,000 | 45,000 | 40,000 | 35,000 |
解約時期 | 6カ月 | 7か月 | 8カ月 | 9か月 | 10か月 | 11か月 |
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短期料率による戻り額 | 18,000 | 15,000 | 12,000 | 9,000 | 6,000 | 3,000 |
月割りの額 | 30,000 | 25,000 | 20,000 | 15,000 | 10,000 | 5,000 |
また、月払い契約の場合は、解約日以後の保険料の支払いが無くなるだけですので、年払い契約のように短期料率の適用はありませんが、留意するべきこともあります。
例えば、1月25日を始期日として契約し、11月20日に解約する旨、手続きが済んでいる場合、本来なら11月分の保険料は支払わなくて良いハズですが、11月26日には保険料が銀行口座から引き落とされてしまうことがあります。
こんな場合は、11月26日に引き落とされた保険料が、後日、そのまま返金されます。
なお、中には「当月分の保険料は翌月に引き落とす」という保険会社ありますが、そういう場合、(先述の例では)11月26日に引き落とされた保険料が後日、返金されることはありません。
自動車保険を解約したら等級は、どうなってしまうの?
事故無く、安全運転を続けていると、契約していると自動車保険の保険料の1等級が上がり、保険料が安くなっていきます。
特に20等級は、安全運転の勲章とも言えるでしょう。ところで、自動車保険を解約してしまうと、勲章にも等しい自動車保険の等級は、どのようになるのでしょうか?
自動車保険の解約日の翌日から、何もしないで7日間経つと、勲章にも等しい自動車保険の等級も、残念ながらリセットされてしまい、今度、新たに自動車保険を契約する時も、また6S等級(条件を満たせば7S等級)から、地道に積み重ねなくてはなりません。
解約する自動車保険の中断とは?
自動車保険を解約しても、条件を満たせば、安全運転の勲章とも言うべき、自動車保険の等級を10年間、「保存」できる方法があります。
これを「中断制度」と言いますが、中断制度を利用するための条件は、以下の表の通りです。
表:中断制度を利用するための条件
等級 | 中断する契約は7等級以上であること | |||
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手続き | 解約日から13カ月以内に中断証明書の発行を申し出ること | |||
中断理由が以下のいずれかであること | ||||
中断理由 | 添付書類 | 中断後の新契約 | ||
国内特則 | 以下の①~⑥のいずれかに該当すること ①解約日までに、契約の車が廃車、譲渡、 リース業者へ返還されている。 ②登録の一時抹消 ③いわゆる車検切れ ④盗難に遭った ⑤災害等で全損 ⑥契約の車が車両入替後の車両として別の 契約に車両入替されている。 |
②登録識別情報等通知書、登録 事項証明書等のコピー ③自動車検査証、登録事項等証 明書のコピー ⑥変更届出書のコピー (①④⑤は添付書類不要) |
中断日の翌日から 10年以内に契約 |
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海外特則 | 記名被保険者が海外に出国する日が、中断する契約の解約日から6ヶ月以内の日。 | 添付書類は不要(中断後の新契約の手続き時に出国日と帰国日が分かるパスポートのコピーが必要) | 出国日の翌日から10年以内かつ帰国日の翌日から1年以内に契約 | |
妊娠特則 | 契約の用途車種が、二輪・原付であり、中断する契約の解約日までに母子保健法に定める妊娠の届出を行っていること。 | 記名被保険者の母子健康手帳のコピー(届け出日が記載されたページ) | 中断日の翌日から3年以内に契約。 |
表の右側をご覧頂くと、国内特則の場合は、契約の中断日から10年以内に、自動車保険の新規の契約をすれば良いので、自動車保険の等級は最大、10年間「保存」することができるのです。
また、海外特則の場合は、解約日から6カ月以内に出国し、出国日の翌日から10年以内かつ帰国日の翌日から1年以内に自動車保険の新規の契約をすれば良いので、自動車保険の等級は最大、11年6カ月「保存」することが可能です。
自動車保険を解約する時は中断証明書の発行も忘れずに!
自動車保険の等級を保存するためには中断証明書の発行が必要なります。自動車保険を解約後、改めて、自動車保険を契約する時に中断証明書を添えて手続きをすれば、保存しておいた自動車保険の等級が、そのまま復活するのです。
なお、中断証明書を発行する(つまり、解約する)保険会社と、中断証明書を利用して契約する保険会社が異なっていてもOKです。
そこで、自動車保険の解約手続きをする時に、併せて、中断証明書の発行手続きも行ってしまいましょう。先述の表の通り、中断証明書の発行は、解約日から13カ月以内なら可能ですが、13カ月を過ぎてしまうと出来なくなってしまいますので。
ちなみに、中断証明書の発行に当たって手数料等は掛かりません。なので、自動車保険を解約する時点で、「今後、車を持つかどうか、分からない」と言う方でも、ひとまず、中断証明書を発行してもらい、大切に保管しておきましょう。
なお、中断証明書の発行の条件や手続き、そして、中断証明書を利用して自動車保険を契約するための条件や手続きは、各保険会社で異なりますので、詳しいことは各保険会社にご確認ください。